涼宮ハルヒの憂鬱 第8話 孤島症候群(後編)

 事件の真相は前回予想したとおり、オッカムの剃刀で考えれば自然に出てくる事でしたが、ラストでキョンが「ハルヒ」と「作者」の違いはあれ、ほぼ同じように考えていた事を語っているのには笑いました。
 前回の古泉の講釈などはメタ・ミステリーとしてはさほど面白くありませんでしたが、今回は各種演出が各種既存ミステリー系作品を意識したもので、実にメタ・ミステリー的に面白い。

とりあえず気がついたミステリーを意識したであろう演出

  • 斜めむきやパース強調したカメラワークを多用。不安感の演出。
  • 冒頭、俯瞰視点のロングショットで部屋の全景と登場人物を映す。状況を引いた立場で見下ろすような演出。
  • その他にもロングと斜め、パース強調のカメラワークによる、客観視や不安感の演出。
  • 古泉の頭上でファンが回る演出も、しばしばある不安感を煽る演出
  • ハルヒによる事件の状況の想像の単色映像。実写ミステリー作品の回想シーン(元ネタの映画がある?)の演出を意識。人物の動きなども妙に実写っぽい。実はアニメスタッフ自身が演じた実写映像を加工した?
  • ハルヒたちが開けさせようとしても、長門が扉を開けないシーン。おそらくは、恐怖感に囚われた登場人物が部屋に閉じこもるシーンのパロディ。
  • 名探偵コナン』な黒ベタで目だけが描かれた人物。画風もコナンにあわせてある。
  • 真相が明らかになったあとの、パターンの「皆を集めて名探偵の説明会」になると、演出が「逆転裁判」を意識した明るいものになる。回想映像も異様性を強調したどぎつい加工では無く、普通の古いモノクロフィルム風の加工になる。なお、この手の説明会シーンはミステリー風刺では非現実的でステロタイプ扱いされているので、それをわざわざやりたがるハルヒの「遊び」「本当の事件で無かった事の安心」である事を演出している。
  • ラスト。船で帰途に着きながら、事件が終わった事を演出するような爽やかな青空の下、事件について語らいながら、遠方の現場を眺める......ミステリー物の定番ラストシーン。
  • キョンの黒子をなぜかアップにするシーン。ミステリーのラストで、解決しきらない何かが残っているとほのめかす演出を、無意味な黒子をアップにする事でパロディ化。

 ドラマ的には、ハルヒが内心で一番頼っている相手はやはりキョンだったり、なんだかんだ言ってキョンハルヒの事を一番理解していることをラストシーンで示していたりといった点がポイント。

 次回は時系列的には14話相当。これまでは時系列よりも見せ場の効果的配置と解釈できましたが、今回の「孤島症候群」二回の間に別のエピソードを入れたりと、いささか意図を計りかねる状態。まあ第一には、オープニングでも明示されているように「シリーズ構成:涼宮ハルヒと愉快な仲間たち 超監督涼宮ハルヒ」という演出意図なのでしょうけど。