涼宮ハルヒの憂鬱 第4話 涼宮ハルヒの退屈

 今回のデストロン軍団SOS団ガルバトロンハルヒの思いつきで野球。
 シリーズ構成的には相変わらずアグレッシブ。
 普通ならAという事件があり、次のB事件ではA経験を踏まえた言動が出てくると構成している。ところがハルヒの場合第一話にいきなり自主制作映画を持ってきたこともそうですが、今回も、まずB事件を出してそれ以前のA事件への関心を持たせる描写をして、その後にA事件をあらためて描くという構成になっている。変則的で一般には多用できませんが*1、これはこれであり。

 なおかつ今回の注目点は、登場人物たちの心境をけっして説明的に描かないのに、表情や実際の行動を見ればその心境が十分理解できるように描いている事。
 これは一定以上の演技力や演出力、アニメでなら作画演出力がないとできない*2
 まず、相手の野球チームがハルヒの実力を見て、即座に本気を出すあたり。ここで相手チームは「本気を出すぞ」というような台詞は一切言っていない。しかし表情や、実際の投球、その他の無駄のない動きなどで「本気になった」「相手の実力の認識力が的確」「よく訓練された野球チームである」ことが容易に理解できる。
 そしてなによりが、ハルヒの不機嫌の描写。登場人物たちは「負けているから不機嫌」と語っていてますが、みくるへのキョンの行動に対するハルヒの表情や、みくるや小泉による間接的な言及など見れば「ハルヒキョンを憎からず思っていて、活躍しないことにいらだったり、嫉妬したりしている」というのが不満の根っこ理由であることはわかります。常に喋りつづけて解説しているはずのキョンも、ハルヒのことに全く気がついていない(もしくは内心わかっていても認めていないのか)ので、当然言及もしないというひねくれぶり。
 なおかつ最初に述べたように、シリーズ構成上のエピソードの前後を入れ替えているので、ハルヒキョンを憎からず思うようになった出来事に突いてはまだ描かれいない。ようするに脚本的な段取りを封じた上で、演出のみで人間関係の現状や過程を理解させようとする、意図的な片翼飛行のみで話や人物描写の説得力をどれだけ持たせられるかという実験的な方法になっている*3

 ......というような話はおいておいて、ハルヒとみくるがじゃれあう猫のようで可愛らしい。まあ色々な意味で少々過激ではありますが。それだけでも面白い。

*1:ただし、冒頭で未来のシーンを描き、そこからの回想などという形で過去の事件を本編として描くというような構成はよくあります

*2:富野監督が、自作で台詞が多いのは作画にコストをかけられないのを補うためと言っている事

*3:演出のみに頼ろうとする例は、ようするに「強引で露骨な泣きや燃えのシーン」の類。あるいは、脚本がダメな映画だと、なまじそれまでの話の過程を知っているより、クライマックスシーンだけ見たほうが感動できるという現象