Fate/stay night 原作テキストからのアニメ化の問題は?

 この前の続き。

 この前*1は、原作からストーリーを整理再編しようとして、かえってまずくなったのではないか*2という推論を書きましたが、次は魔術、戦闘。

 初のサーヴァントの見せ場のはずの最初のアーチャー対ランサー戦。問題なのは、原作でも「魔法物としてはサーヴァントの能力は結構地味」。
 たしかに超人的なのですが、基本的には「武術がものすごく上手い」だけ(私はまだ原作はアーチャー、ランサー、セイバーまでしか見ていませんが)。同じ原作者の「月姫」だと、主人公や敵味方は、派手な特殊能力が多かったですが*3、そういうのも無しで地味な特殊能力。
 原作だと、細かいテキスト描写を積み重ねて戦闘や魔術等の迫力を出しているのですが、アニメ版は駄目とまでは言いませんが凡庸。普通の人が剣や槍で戦っているだけにしか見えない。ジャンプとか凄くても、アニメの武術家では珍しくも無い程度の誇張描写ですし。
 アニメ版でも冒頭、少し描かれた凛のサ−ヴァント召還シーンも、原作だと魔術回路が繋がる感覚などを細々描写していたのが、アニメだとありがちな召還魔術シーン。

 個人的には「はじめの一歩」のボクシング試合の原作/アニメ版双方でやっているような描写演出方法(選手の感覚や思惟を様々な形でクローズアップして描写)あたりがうまく転用できるとおもうのですが。
 こういう方法でなくてもサーヴァントが、普通の人間ではできない事をするところをもっと強調して描くとか、それに対する登場人物たちのリアクション(典型例:男塾の富樫&虎丸)を強調するとかはやるべきと思いますが、そういうところが妙に薄い。

 アニメ版『Fate』導入部の私なりの評価としては、そのまま使えそうなプロットの部分は変更を加えてかえって進行の段取りが悪くなったのに、細部の方は工夫が足りず凡庸と、どうにもピント外れな事をしていると考ます。

*1:http://d.hatena.ne.jp/utumi_k/20060213/p1 迷惑投稿者のコメントを残しているのはご容赦を

*2:コメント欄で書いた事も含めておさらいしますと、”巻き込まれがた主人公”の導入方法にしようとしたところ、背景情報が少なく済む話なら問題がなかったのが、背景情報が多い『Fate』だと上手くいかなかったのが原因ではないか、という事

*3:眼鏡を外すと何でも切断できる線が見えるとか、17分割されても一日で再生する不死身っぷりとか、空想具現化とか、666の獣を自在に操るとか、赤い髪を網のように張り巡らせて何でも吸収してしまうとか