空想科学読本3 ビームサーベルとは、どこまで実用的な兵器か? の 珍理論

 本題にする「4」のネタではないですが、これもガンダムネタ。
 なお、同書に書かれているスペースコロニーについての記事のデタラメさは山本弘氏の『こんなにヘンだぞ!空想科学読本』で徹底批判済み。一口で言えば「スペースコロニーについて書くならオニール案と、それへの現実での検証について勉強してからにしろ」。
 まず、出だしのイラストから「銃のほうが楽なのに」と書かれていますが......『機動戦士ガンダム』ではビームサーベルは基本的に、ビームライフルやハイパーバズーカなどの銃火器の弾を撃ち尽くした後で使う予備武器という扱い。他のガンダムシリーズでも、概ね、銃火器の方が優先的に使われている。出だしからして、無知な言いがかり。
 著者は、ミノフスキー粒子の事に一応言及するが、詳細をまるで調べず、勝手に「素粒子だろうが、激しい核反応が起こり、放射線が飛び出て、被曝する」と、勝手に想定して、それを却下する。
 そこからさらに、「ビームサーベルはレーザー光線」と、「宇宙世紀世界のビームライフルビームサーベルのビームは、高エネルギーを持った粒子(どういう粒子かは諸説ありますが、粒子なのは確定事項)のビーム」というガンダムの基本設定と全然違うことを、勝手に決め付けて論を進める。
 そして、スターウォーズライトセイバーとともに、勝手に「レーザーなら刃を刃で受け止めることはできず抜ける」と論じますが......ビームサーベルライトセイバーも、力場のような物でエネルギーの刃を形成していて、その力場の反発力で受け止めているという設定なのですから、全くのデタラメ。
 さらに、「面倒な剣を使わず銃を使え」と書きますが、ガンダムに関しては、完全な言いがかり。スターウォーズに関しても、ビームガンの連射を次々ライトセイバーで受け止め、相手に対して跳ね返す、フォースの超感覚を持つし、また独自の騎士道精神を持つジェダイ騎士の専用武器なのですから、これまた、言いがかり。
 そして、「ビームサーベルライトセイバーはレーザー」「ガンダムは銃を使わない」という間違った前提で話を延々続けて、「レーザーの長さを制限しているのは周辺に被害を及ぼさないため」という珍結論をひねり出す。威力のあるレーザーがそんなに長く伸びるなら、素直に兵器として使うし、現にガンダムには、ソーラレイという長距離巨大レーザー兵器があるのですけど。
 また、著者は「レーザー兵器のメリットはそのスピード」と言っていますが、これも、間違いとは言い切れないものの、見当違い。レーザー兵器のメリットは、サーチライトのように動かしながら照射しつづけるという使い方で、命中率を挙げることができるという点にあり、そういう方向で、戦闘機の搭載兵器として研究もされています。SF作品では、『マクロスゼロ』の第一話や、アニメ版『戦闘妖精雪風』最終話などでは、実際にそのように使われています。
 スターウォーズに関しては、「普通の刀でも棒でも相手にダメージを与えられる」とも言ってい
ますが、ライトセイバーのとてつもない切れ味(普通の刀では困難な、一瞬で相手の四肢や首をはねることが容易にできるほどの切れ味)が理解できない著者の理解力は、どうしょうもなく低い。