名探偵ポワロとマープル エンドハウス怪事件/邪悪の家

 種デスの陰に隠れてまるで話題にならないものの、こちらも、地震、台風続きで、種デスよりもさらに待遇の悪い延期続きで、放送再開は来週。
 でまあ、原作を、クリスティ文庫の訳『邪悪の家』で読み返してみました。

 以下ネタバレ極力無し。

 この原作の、ここを外すとつまらなくなるという肝を、箇条書きにすると以下のとおり。

A・今風(1930年代ですが)の若い女性であるニック・バックリーと、老探偵ポワロ、二人の間の年代であるヘイスティングスの、世代ギャップを感じさせる会話。
B・殺人未遂状態からの警護から始まり、いつもの事件発生後から始まる状況と勝手が違い苦労するポワロ。
C・犯人に度々出し抜かれ、何度も「偉大な灰色の脳細胞を持つ私が防げないとは情けない」と、卑下しているのか、自惚れているのかどっちかといいたくなるような、ポワロのおかしなリアクション。
D・ブラフを何度もかけたりして、関係者と会話し、観察するポワロ。

 しかし、Aはヘイスティングスとメイベルがニックと同じぐらいの年代やそれ以下になっているのでやりづらくなっている
 Cは、ポワロの性格が普通になってしまっているので、できそうにない。
 B、Dは、会話シーンを面白く見せる、作画、演出、演技力が必要なわけですけど......これまでの安っぽい作画、凡庸な演出、素人声優の多数動因(エンドハウスでも相変わらず)を考えると、やはり期待できず。なにより、ポワロの個性がなくなっているのが、ここでも響く。
 原作の個性がのこされているマープルと違って、それがほとんどなくなっているポワロのパートでは、原作のポワロの個性によって成立している多くの部分がつかえなくなるので、その時点で、つまらなくなってしまいます。コロンボや古畑の聞き込みシーンで、あの独特の話し方がないと、やはりつまらなくなるのと同じで。

 それと、致命的に影響する問題でもないですが、心気症、癲癇、らい病がアウトだった今までのを見ると、今回の「コカイン」もアウトなんでしょうなあ。トホホ。

 話数もたった三話だそうで。OP、ED、クリスティ紀行の分を差し引くと25分ぐらいで、三話だと75分。原作はクリスティ文庫版で400ページの長編。
 そもそも、今までの放送分を見ると、一話で30ページぐらいの短編がちょうどいいぐらいですから、単純計算すると、400ページの長編を描くには13話1クール必要。まあ、これは長すぎますけど、できれば六話、最低限四話ぐらいはほしい。
 どちらにしても、たった三話では、全然足りない。同じ400ページの『ABC』が四話使っていて、解決編がずいぶん駆け足だったりと、明らかに尺が足りていなかったのに。
 なお、実写版の『名探偵ポワロ』は一話90分で、『ABC』『エンドハウス』ともに、前後編で約180分。こちらはこちらで、短編のボリュームアップに苦労していそうですが。

 やはり今回も『ABC殺人事件』同様、ボンクラ駄作になりますか。