名探偵ポワロとマープル

 今日から全三回で『エンドハウス怪事件』。
 これが、案外上手くアニメ化できています。事前に最悪クラスの出来を予想していたので、相対的に、ずっと良く見えたという事もありますが。

 原作の基本的な骨子は保持しつつ、脚本は、原作からほぼ書き直し。
 登場人物を減らしたり、遺言状関連を原作より簡潔にしていたり、重要な伏線のいくつかを速いうちから強調していたり、その他原作からアレンジされている部分が多いですが、いずれも、尺の短さを考えれば適切なアレンジ。
 四部作で一話ごとの展開が単調だった『ABC』と違って、今回一話でも話の起伏がちゃんとある。
 なにより、メイベルとオリバーがまともにポワロの助手として仕事をしている。
 さすがに、製作スタッフは、『ABC』の失敗を反省して改善しているようです。

 ただ、原作の、尊大な老探偵ポワロと、今風の若い女性(1930年代ですけど)のニック、その間の年齢のヘイスティングスの、世代ギャップとか、あるいは「この偉大なる探偵であるポワロが失敗するとは情けない」と卑下しているのか尊大なのかよくわからないポワロの悔やみ言などといった、原作の面白の一つである「会話の面白さ」は完全にスポイルされています。
 あと、原作では多数の謎が入り組んでいたのを、次週予告を見る分には一本化するようですので、原作の「解決編で、入り組んだ謎が解きほぐされ、真相が明らかにされる」という面白みも、まずないでしょう。当然、原作の、最後の最後のちょっとした謎解きも無し。

 あと、これは、明らかに製作者側(おそらくプロデューサークラス)の責任による駄目なところ。
 重要キャラ四人のうち、ニックとフレデリカの、伊藤美咲中山忍のアテレコは、事前の予想通り、聞くに堪えない代物。同等の重要度の残り二人のジョージ中佐とチャールズ弁護士が江原正士と古川登志男という本職で経験十分の声優なので、よけいにギャップが酷い。