Fate/stay night 第19話「黄金の王」

 先に見た方々の金アーチャー登場シーンの評判が「唐突」などとずいぶん不評なので何事かと思っていたら......たしかに駄目ですわ。*1
 突然出てきただけなら意表をついた登場ですが、この場合、キャスターが原作よりはるかに本人の地力が強くなっていて倒す手段が無いところに、何の前ふりもなく出てきて、キャスターを勝手に倒してくれるという、手詰まりの主人公たちに一方的に都合のいい事をしてくれたという代物。これでは、「唐突かつ安直なご都合主義」といわれるのもしかたがない。
 原作の第一ルートと第二ルートのそれぞれのキャスターの最期を合成したようですが、そのやり方が大変まずい。第一ルートだと「別の勢力に負けて手詰まりになったキャスター(単独)が衛宮家を襲撃。しかりあっさり返り撃ちにあう。そこに金アーチャーが初登場、セイバーたちへの挨拶代わりにと悪あがきをするキャスターに武器の雨でとどめめをさす」、第二ルートだと「キャスターと葛木に対して善戦するも完全に手詰まりになる士郎と凛。そこにキャスターに服従したかに見せかけてチャンスをうかがっていた赤アーチャーが攻撃を仕掛けて、キャスターと葛木と倒す」。
 第一ルートだと金アーチャーの乱入は突然でしたが、あくまでもキャスターの敗北が決定的になった後の事。第二ルートだと赤アーチャーのキャスターへの奇襲は充分な前振りの上での事。
 ところがアニメ版、原作からわざわざ大きくアレンジして、キャスター本人の地力だけでセイバーたちを圧倒できるほど強くしておきながら(一番有利な原作第二ルートでもあくまで策謀で自分に有利な状況を作っただけ)、それを突然乱入してきた赤の他人に力押しだけで勝手に倒してもらうという解決にしている。......どうしてこんな駄目な脚本にしたのだか。

 さらに、たしかに前回の幼少時の回想やほのめかす凛の言動などで大体はわかるでしょうけど、そこから二人の関係を未だ明言しないという、いささか意図を理解し難い事を続けています。この先原作の第一ルートメインの展開でしょうから、アニメ版ではほとんど扱われていない原作第三ルートのネタである二人の関係の謎をまだ引っ張る必然性は見当たらないのですが。

 セイバーの事情も、サーバントとして特殊という事はアニメではかなり説明しにくいだろうと思っていたのですが、あんな中途半端な代物とは。アニメだけ見ていたら「セイバーはまだ輪廻の中に」というのは意味不明では。あれなら「サーヴァントになってでも聖杯による王の選定をやり直したがっている」と単純化して、あとは思い切って省略した方がよかったのでは。
 原作未読の方に説明
 通常サーヴァントとして召還される英霊は、「死後」に時間などの外にある英霊の座(神様や精霊の世界のようなもの)に自らの業績で収まった存在で、現世に召還されるのはその「分身」。
 ところがセイバーの場合、「死の直前」に聖杯の力で王の選定をやり直したくて、「世界」と執念で契約して、死後は通常の英霊より使役される立場がずっときつい守護者になるかわりに、英霊としての立場を前借りして聖杯獲得のチャンスがあるところに時間の内側にいながら*2それを超越して「本人*3」が召還してもらえるようにしてもらったという特殊な状態。まあ大雑把な説明ですので微妙なニュアンスは原作の方を*4
 つまり「死の直前に英霊の立場を前借り」「死後は拒否権の無い使役精霊みたいな立場になるのを覚悟」というほどの執念で王の選定をやり直したがっているという意味。

*1:「カタログ落ち http://d.hatena.ne.jp/corydalis/20060513」「瞬間最大風速ひとりカイギ´ http://d.hatena.ne.jp/manpukutaro/20060515」「アニメ生活 http://kiyozou44.blog47.fc2.com/blog-entry-202.html」など他色々

*2:まだ死んでいないので

*3:といっても召還先での体は他サーヴァントと同じで魔力で構成されていますが

*4:なお霊体化できないのも、召還が不完全というのは事情を隠すための嘘で、セイバー自体が例外的なサーヴァントである事が真の原因