トリマルキオの饗宴

 『ローマ帝国の神々』と同じく、id:mallionさんが先に読まれていた本(http://d.hatena.ne.jp/mallion/20060313)。
 古代ローマ帝国の小説『サテュリコン』の内で現存している『トルマルキオの饗宴』の部分から、当時の社会や風習を解説した本。
 『トルマルキオの饗宴』はあくまで小説なので事実としてそのまま受け取れるものではないのですが、この本は一つ一つ丹念に、記述内容の背景となる当時の実際の風習や社会と比較して、『トルマルキオの饗宴』が風刺しようとしていた当時の事情を見事に述べています。
 こうしてみるとフィクション、ノンフィクションともにその時期の人間が自然にもっている認識を前提にかかれているので、場所や時代がかけ離れていると細部のニュアンスまで理解するのが困難である事があらためてわかります。
 私個人の経験ではミステリーの古典『Xの悲劇』を読んだときの事。米国では『Yの悲劇』より人気が高いのですが、読んで面白く思えなかった。というのも物語の主な舞台となる、1932年当時のアメリカの市電というのを上手くイメージできなかったから。映画だと映像ですぐわかりますが、小説はテキストを理解する予備知識がないとどうにもならない。