ローマ帝国の神々

 読了
 id:mallionさんが既に読まれていた物(http://d.hatena.ne.jp/mallion/20060309)。
 古代ローマ帝国で信仰されていた各種宗教について、よく採り上げられるギリシャ・ローマ系とユダヤ教キリスト教のみならず、簡単に語られるだけの事が多いエジプト系、シリア系、キュベレ女神、ミトラス系、あとグノーシス主義占星術についても述べた本。
 ギリシャ、ローマがある程度以上社会や学問などが発展した国として成立した頃には、ギリシャ・ローマ系の神々は当時の人々にとってすら縁起担ぎや物語上の存在にすぎず、崇拝心はすっかり薄くなっていたという指摘は、確かにごもっとも。
 でもって無宗教的になるわけでは無く、より神秘性の高いオリエント系の神々への信仰が盛んになったと。
 古代ローマ帝国は、ローマの秩序に反しない限りは宗教的にはかなり寛大で雑多な宗教が並存していたのですが、そのなかでキリスト教が最終的に絶対的優位性を確立した理由の分析は、実に腑に落ちました。「1・組織力」「2・信仰参加が開放的で、経済的負担もさほどでなかったこと」。でもっていささか皮肉が効いているように見えるのが「3・他宗派はお互いに寛容であったのに対し、キリスト教は非妥協的であったこと」。

ローマ帝国の神々―光はオリエントより (中公新書)

ローマ帝国の神々―光はオリエントより (中公新書)