Fate/stay night 第12話「空を裂く」


セイバーの最大級の宝具発動

「聖なる手榴弾!」

ちゅどーん
爆死する伝説の魔獣(Vopal Bunny)
 アーサー王と聖杯といえばこれ、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』という事で。

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 他の宝具は、「ツバメの速度*1」「歴史家&アニメーター殺し」

 本題

 ビルを駆け上りながらの戦いの末の、ライダーの騎英の手綱 対 セイバーの約束された勝利の剣。スペクタクルとして必要なライン以上はよくできていました。あちらこちらの他所様を見ても概ね満足されている。
 ただ厳しい事を言うなら、原作でも特にアニメ映えさせやすいシーン(なにせ、光ながら突進 対 イデオンソード)なのですから、出来て当然ですが。原作の方も確認してみましたが、原作のテキスト描写とグラフィックをほぼそのまま引き写していただけですから。この後の展開は派手な法具が多いですが「光ってでかい破壊力」というのではない法具は上手くいくか。
 法具の名前を叫ぶシーンはカタカナ名のみ。原作は和訳表記にカタカナ名のルビを振るという、声で読む台詞にしにくい物でしたので、今一。ただ、テロップを出すのはセンスに欠けていますし、妥当そうに思える和訳名+カタカナ名を言うというやり方は、台詞が長くなるというデメリットもあり。どれがいいか、一概にいいきれない。

 問題なのは、エクスカリバー発動直前の状況と、発動直後の士郎の描写。
 まず、エクスカリバー発動直前の状況。士郎が屋上にきたのを見て「士郎!なぜ!?」といい、士郎が自分に向かって駆け出してくると苦い顔をして、最初考えていた戦法からパワーを大量消費するエクスカリバー発動に切り替える。「士郎に足を引っ張られて、使わなくてもいいエクスカリバーを使った。士郎は相変わらず足手まとい」というようになっている。
 原作では、士郎にネガティブな感想は出てこなかったので疑問に思い原作を見返してみましたが、原作での重要な心理描写がかけていました。
 原作では以下のようになっています。以下引用。

 彼女は初めて、戦いの中で敵を忘れた。
 このような死地にやってきた主への怒りもある。
 このような展開になるのは当然だと、思い至らなかった自分への怒りもある。
 だが、それは思考の隅に追いやられた。
 他に何があろう。
 この死地において、彼の瞳はただ、彼女の身を案じているだけだったのだから。

 「シロウ------」

 -----思えば、彼は初めからそうだった。

 彼女が優れた騎士であると理解しながら、
 ただの一度も、騎士として扱わなかったその視点。

(中略:ライダー側の攻撃準備の描写)

 彼女が主を守るためには。
 あの敵を、その天馬ごと斬り伏せるしかない。

 「-----」

 それが正しいのか、彼女には考える時間などなかった。
 もう一度だけ、遠く離れた主に視線を送る。
 彼は彼の役割をこなそうと、賢明に歯を食いしばっていた。

 「-----風よ」

 それで迷いは消えた。
 先の事など忘れた。
 今はただ、主の剣となって、その敵を打ち滅ぼすのみ。

 ようるするに原作では、純粋な戦闘面では足手まといでも、気持ちの面では感銘を与えてた士郎の事を考え、エクスカリバー発動を決断するというようになっているのです。しかしアニメ版だと、台詞と直接的な状況描写の部分はほぼそのままトレースしているのに、肝心の心理描写の部分が欠如しているし、それどころか駆け出す士郎(この描写自体は確かに原作にもありますが)を強調する事までしている。
 より妥当な演出を考えるなら、一例としてこういうのを。士郎が屋上に来たのをみて、一瞬顔をしかめるセイバー。しかし、士郎の優しさの部分を思い浮かべ(該当する回想映像を流す)、優しい表情にかわる。そしてライダーを見据えて、エクスカリバー発動。

 もう一つ演出ミスと指摘できるのが、エクスカリバーを見る士郎。
 アニメ版単体で見ると、エクスカリバーの威力への驚きと、それを使ったセイバーの心配をしているようにだけ見えるシーンですが、原作では同時に、「何故セイバーが、あの剣を持っているんだ?いや、答えは一つ、セイバーの正体はあの偉大な騎士王なのか.....」と思っているシーンでもあります。
 たしかに、エクスカリバーという名前で多少気の利く視聴者なら、原作の士郎と同じ考えを持つでしょうが、それだけをあてにするなら、原作でもわざわざ士郎の心中の考えという形で強調する必要はないわけです。
 原作でもこのシーンで具体的に士郎が喋っているのはアニメ版同様に「セイバー....」の一言だけですが、だからといって重要な心中描写をスポイルしていい事にはならないでしょう。 例えばボイスオーバーや小声の独り言で「伝説の騎士王の剣.....なぜセイバーが.....いや、あれは彼女の物以外の何物でも無い......」と士郎に言わせれば、それで済む事と思います。

*1:それゆえにセイバーがツバメ返しの使い手の小次郎と戦ったのは必然......なわけはない