クレオパトラの謎
吉村作治氏の著作で、年始のテレビ番組の元ネタと思われるもの。
「カエサルはクレオパトラから強い影響を受けた」という見解で書かれている。
カエサルファンである塩野七生氏の著作と比べて、暗殺される直前のカエサルを、体調不良と職務の疲れでいささか耄碌していたと遠慮ない見解を書いている。
しかしカエサルの遺言状に、クレオパトラと息子の事について一切書かれていなかった事について「カエサルはクレオパトラとの間の息子を後継者指名するつもりだったが*1、自分の死を考えていなかったから書いていなかった」と述べ、オクタヴィアヌスが家名と財産の相続人に指定されていた*2というよほどの事が無いとありえない*3事は無視というのはいただけない。
- 作者: 吉村作治
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1983/02
- メディア: 新書
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*1:ローマの法律による正式な婚姻による息子ではないので無理。もしそんな事をするつもりだったなら、カエサルは吉村氏が考えるよりもずっと耄碌していた事になる
*2:過去から現代までの人間社会の事を考えてみれば、カエサルのような立場の者の家名と財産を受け継ぐ事は、事業の後継者指名も同時に意味する
*3:当時のオクタヴィアヌスは実績が無いに等しい18歳の「少年(キケロからの呼ばれ方)」。それでカエサルの急死でアントニウスの妨害を切り抜けて後継者の地位を確立し、二年後にはローマの三頭の一人になったほどの政治的大天才。偶然という可能性もあるでしょうが、順当に考えればカエサルがオクタヴィアヌスの才能を見込んで指名した可能性の方がずっと高いでしょう