宇宙戦争

 見たのは去年ですが今更。
 評価する人の割合もある程度ありましたが、不評の方が多かったこの映画。
 実際見てみると「どうしてあんなに不評だったのだろう」と思えてくる。いや不評な理由もわかりはするのですが。
 スピルバークは特に意識したわけではないでしょうけど、一般人の立場で、その理解も働きかけも超えた危機からひたすら逃げつづけるところは、ヒッチコックの『鳥』を連想しました。ラスト近くのとってつけたようにヒロイックな、弱った宇宙人に対する反撃はむしろ余計に思えました。
 既に誉めつくされていますが、ダコタ・ファニング に演技もお見事。
 ひたすら追い立てられる恐怖描写は『激突』以来のいかにもスピルバーグ的な迫真味。宇宙人相手の戦闘の描写は『プライベートライアン』。それ以上に災害描写とそれに翻弄される人々の描写には911の影響がはっきり見てとれる。
 また、サーチライトで照らされ歩行機械という、昔の安手のSFイラストのような情景を、あれだけの迫力と恐ろしさで描いているのも素晴らしい。
 ただ、やはり難点も色々ありまして。侵略先の病原菌への対策を何もしていなかった宇宙人というのは、原作が書かれた時代ならまだしも、やはり現代では無理がある。原作では火星から地球という近い距離を切羽詰って侵略しに来ていたのに対して、今作では(作中人物の推測ではありますが)かなりの余裕を持って侵略にきているので、原作以上にマヌケに見える。もっと問題なのは、原作は火星人がいかに科学的に極限まで発達した種族であるかを散々描写した末のあのオチなのに対し(今作の冒頭とラストのナレーションも原作から引用されている)、今作では全く同じなのにただの神風的なニュアンスになっているのも物足りない。
評価:74点