花の咲く港

 木下恵介氏の監督デビュー作。
 島の村に、村の昔の名士の息子を名乗って、その名士の造船事業を再開しようと持ちかける、ペテン師二人。しかし、島の人々の期待の大きさと、次第に進んでいく事業を見て、二人は良心の呵責を感じ.....という話。
 しかしながら、本筋以外に、当時の意図とは別の見所になるのが、1943年という製作年による、世相の反映。
 この当時はもちろん太平洋戦争の真っ最中で、日本が次第に劣勢になってはいるが、一般国民の立場からは、まだ負け戦を感じなかった時期。
 だから、作中で、対英米への開戦のニュースに島民たちは素朴に沸き立ち、「高速道路網を作ろう」「新幹線を作ろう」「オリンピック開催事業を頑張ろう」というのと同じようなノリで、「お国のために造船を頑張ろう」と団結して、ペテン師二人組みもそれに感銘を受けるという光景や展開が、映画作りの上で、国策宣伝を強いられたふうでもなく、ごく自然に描かれている。
 この映画のラストは、もちろん戦争に貢献するための造船が成功して、めでたしとなるのですが、この後の現実の歴史の展開の展開を知っていると、やはりあの島民たちは造船事業で大損する事になるのかと思ってしまう。

木下惠介 DVD-BOX 第1集

木下惠介 DVD-BOX 第1集