機動戦士ZガンダムII-恋人たち-

 総評としては、「恋人たち」のタイトルのごとく、様々な恋人たちを描けていましたが、反面、「恋人たち」が別々に描かれるので、全体としての起承転結が弱い映画。
 第一部、第二部共に、しばしば、「総集編だから話が飛び飛び」と言われていますが、冷静に考えてみると、初代の映画版三部作と同程度に一本の映画としてまとめなおされています。ロ美と美と思えるのは、なまじテレビシリーズを知っているが故の、錯覚*1。一本の映画としてみると、この第二部は、ストーリー全体の起承転結やベクトルが弱く、いささか散漫。
 各シーンごとのメカや人物の描写、機知等は、流用シーン、新シーンともに、まさに富野という素晴らしさ。例えば、キスの時にサングラスを取らないシャアに不満をもつレコアや、ヘルメットが邪魔でキスができないカミーユとファなど*2
 しかし、一番盛り上がりそうなフォウとのロマンスが前半に来てしまい、後半サラがクローズアップされるのは、どうも話として弱い。また、月面へのコロニー落とし阻止も、第一部のジャブロー攻撃作戦と比べると、どうもイベントとして弱い(コロニー落としでも盛り上げられるのは、ガンダム0083などで証明済み)
 極端に話を変えられないし、新規作画の割合にも上限があるという制約はよくわかりますが、どうにかして、香港編を、「ネオホンコンコロニー(Gガンダム」の出来事という事にでもして、後半にもってこれなかったかなあ。
 また、物語としてのベクトル付けの次善の策としては、序盤から全編を通して、シャアがハマーンとの事を色々回想しながら「恋人たち」を見て、ラストの、ハマーン様登場での締めくくりにつなげるようにするとか。
 とはいえ、ラストの新規作画によるガザC軍団は、劇場で見る価値充分でしたし、元恋人のシャアに対して静かに恐ろしくドスの効いたハマーン様は、まさに「恋人たち」の最後の締めくくりにオ、実に富野的に、相応しい。
 とこで、最後の第三部の予告、初代映画版の第三部予告に似た感じに見えましたが、気のせい?

評価 60点
第一部についてはこちら
http://d.hatena.ne.jp/utumi_k/20050528/p1

他所様

ピンクの髪の……
「(声優の)問題はサラ・ザビアロフ。何をもって池脇千鶴を起用したのか全く理解に苦しむ」
http://d.hatena.ne.jp/taske/20051101
田代具
http://d.hatena.ne.jp/tashirog/20051031

*1:この点については、こちらの無責任賛歌 2005/5/28日分に的確な指摘が。http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10788&pg=20050528

*2:これ、ひょっとして、大和田秀樹氏のパロディ漫画集『機動戦士ガンダムさん』のガンダム最終回のパロ「ヘルメットがなければキスをしてしまうところだった」が元ネタですか、監督?