所さんとおすぎの偉大なるトホホ人物伝

 まあ、この手の番組の内容を真面目に論評しても仕方がないわけですが、それでも。
 トホホ人物伝というのなら、キケロ先生が、トホホの山なのですけど、ローマ史的にはメジャーでも、一般的にはメジャーじゃないからなあ。

 しかし、この手の番組って、暴君とその政治ばかり取り上げて、名君(初代アウグストゥスヴェスパシアヌスティトゥス親子、五賢帝コンスタンティヌス)やその政治は取り上げないのね。暴君や暴政の方がネタにしやすいから。

 でもって、ネロの治めた国のことを、デカデカとテロップ付きで「神聖ローマ帝国」って言っていましたけど、それは中世以降のドイツあたりの封建諸侯連合の自称で、お墨付きを与えたのもキリスト教ローマ教皇で、「古代ローマ帝国」とは別物なんですけど。
 要するに、「源頼朝の治めた江戸幕府」と、言っているようなもので。

 カエサル暗殺の話、出だしで「ブルータス、お前もか」という有名な台詞を出して、どうしてデキムス・ブルータス(カエサル配下の有力将軍だが、暗殺団に加わる)の方を出すのかなあ?
 シェイクスピア劇にしても、一般的な認識でも、普通はマルクス・ブルータス(カエサルの愛人セルヴィリアの息子で政治家。カエサル暗殺団の首謀者)の方をさしていて、それに対して「実はデキムスというもう一人のブルータスがいる」という順序のはずなんだけど(カプコンのゲームでもこうなっていた)。
 これだと、知らない人は、シェイクスピア劇などで有名なブルータスはマルクスではなく、デキムスの方と誤解するぞ。

追加

 極めて細かいところではありますが、流用映像では無くこの番組独自製作らしき映像での、カエサル役の俳優が、ヒゲ面。カエサルの時代のローマではヒゲはきれいに剃り落とすもので、当然、カエサルの肖像も、大抵の映画などでも、カエサルにヒゲはないのですけど、この番組ではヒゲ面。役を割り振った外国人の俳優にヒゲが生えていただけでしょうけど、なんだかなあ......

キケロ=橘さん説

 キケロの色々な失態も、当時の波乱の政治状況を考えれば仕方が無いのですけど、それでもやはり、トホホといいたくなる。
 それで、つい頷きたくなるのが、「キケロ=橘さん(仮面ライダー剣の頼れない先輩)的ヘタレ説」
http://d.hatena.ne.jp/capskana/20050319

 キケロ関連のトホホ話といえば、他にも、古代ローマの文献が多く失われていた中世ルネサンス期の、文人ペトラルカが、偉大な哲学者にして政治家と尊敬していたキケロの書簡集を発見して、喜んで読んだものの、そのかなり情けない内容にショックを受け、思いつめたあまり、キケロへの仮想の手紙を書き綴ってしまったという話とか。