スクリーンの中の戦争 坂本多加夫

 この手の本には、なんでもかんでも政治的意図等を過剰に妄想したりするなど、分析と妄想の区別がついていないものも、しばしばあります。
 そのあたりを警戒しつつ第一章を読んでみると、『パールハーバー』を、恋愛ドラマとして駄目、歴史物として駄目、商業的意図があざとすぎて駄目と、三拍子揃った反面教師駄目映画としているのに、きっちりと「映画批評」をしている事がわかる上に、「こんな映画に素直に感心してしまう観客の観賞眼の定価への嘆き」に実にシンパシーを感じました(種とか、種デスとか......)。なお、比較対象は『トラ・トラ・トラ!』。
 他の部分も、映画の内容分析や、題材となった歴史、その映画が作られた社会的状況との比較など、優れた分析と論考をしています。

スクリーンの中の戦争 (文春新書)

スクリーンの中の戦争 (文春新書)