モンテ・クリスト伯 第五巻
読了
損失が徐々に増えていくダングラール、モンテ・クリスト伯爵とヴィルフォール検事のお互い変装しての追跡と偽装、事情を完全に知っている伯爵と気配だけ感じ取っているメルセデスの微妙な関係、エデの過去と次第に明らかになっていくモルセール伯のギリシャでの行動など、伯爵の復讐のストーリーも中盤の展開。
しかしメインは、マクシミリアンとヴァランティーヌの恋。前田版『巌窟王』ではアルベールがメインでしたが、原作ではマクシミリアンがメイン。
マクシミリアンがヴァランティーヌと結ばれるのが絶望的になったとき、ノワルティエ老人が使ったフランツとの結婚を破談にさせる起死回生の方法。その後二人は結ばれるかと思いきやヴァランティーヌに毒殺の疑いがかかり時間に続く波乱の展開。
ノワルティエ老人が秘密を明かすシーン。前田版『巌窟王』は共通性を出しつつ全くの別展開にしていた。どちらもノワルティエ老人が長年隠していた秘密を明かすというのでは共通しています。原作では自分がフランツの父の死にかかわっていたことを明かすことによってフランツに結婚を辞退させマクシミリアンの愛を成就させる。一方前田版『巌窟王』だと原作では競争相手だったマクシミリアンとフランツが協力して、魔神巌窟王の秘密を手に入れるというようになっている。
原作だとナポレオンを中心とした革命の混乱期の出来事が大きく影響して、モンテ・クリスト伯爵の悲劇も、ノワルティエ老人の過去もその一部。前田版『巌窟王』だとこのあたりの政治的な事情は希薄になり、代わりに魔神巌窟王の秘密が重要になっている。
魔神巌窟王の存在によってモンテ・クリスト伯爵の立場などもずいぶん変わっている。原作だとエドモン・ダンデスから獄中生活を経てモンテ・クリスト伯になったのは、ダンデスとしての人生を壊されたというダメージはありながらも基本的には恵みである。その恵みを使って復讐をしている。ところが前田版『巌窟王』だと伯爵になったのは悪魔(巌窟王)に魂を売った「呪い」によるもので、伯爵としての人生に幸せはなく復讐の一念で生きている。
- 作者: アレクサンドルデュマ,Alexandre Dumas,山内義雄
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