機動戦士フリーダムガンダム(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)PHASE43 反撃の声

 細かいところは、他のところで指摘済みですので、オーブ戦にいたるまでの話の流れの、致命的におかしなところを述べましょう。
 結局、アークエンジェル隊の二度の戦闘乱入は、建設的な方向にはほぼ無意味。アスランを、キラのトンチキ行動の弁護で、ギリギリの精神状態まで、追い詰めただけ。
 それどころか、アークエンジェル隊を、迷える子供の思いつきとムカツキだけで最強武力をふるう、大馬鹿集団と、相当の割合の視聴者に思わせたことからすると、マイナス効果の方ばかりでかい。
 カガリがオーブから出た事も、オーブの情勢を余計悪化させただけで、無意味。
 たとえば、オーブ国内でカガリの支持率が低下していたのが、二度の戦闘乱入でのアピールで、軍部等の支持率が向上するということがあれば、あの戦闘乱入にもストーリー上の意味が有ります。
 最初はセイラン家の政策を指示していた軍部等が、次第についていけなくなるという過程を描いてもいい。たとえば、あくまでオーブの保身のために連合との同盟を受け入れたのに出兵までするとは話が違う、という事でセイランへの支持率が低下していくとか。
 ところが、実際のストーリーでは、カガリ誘拐時のキサカなどの反応や、二度の戦闘などでの軍人たちの反応を見る分には、カガリへの支持率は終始、物凄く高い。
 結婚式あたりの描写を見ると、国民の支持率が高いようである。
 それなら、セイラン家主導で連合との同盟が結ばれようとしている時に、オーブ腺の時のように、軍部とアークエンジェル隊の協力で、逆クーデターをすれば済む事。現に、オーブ戦でも、二度の戦闘乱入でも、散々力の行使をやっているのですから、逆クーデターを遠慮する理由は無い。
 さらに言えば、オーブ出奔時に「セイランの陰謀でカガリに危機が」ぐらい、出奔もやむなしという理由付けをしていればいいのに、実際には「カガリが流されるままにユウナと結婚しかける」というだけの物。
 結局のところ、「物凄く支持率が高いはずなのに、カガリに決断力が無いというだけで、オーブは危機に陥った」「カガリが大した理由も無く、国外に出ていたから、オーブは危機に陥った」という、ダメなストーリ展開になってしまっている。
 先に挙げたように「カガリがオーブを出奔すのもの止むを得ない理由」や「当初はカガリの支持率が低下していたが、いろいろあって、カガリの支持率が回復していった」というプロセスを描いていれば、このような問題は無かったのに。これは別に、特別な作劇でも無いはずですが、この程度のことすら、種デスのメイン製作者は出来ない。
 アークエンジェル隊も、汚名を着せられて放浪するという役回りをさせるなら、あんな戦闘乱入をさせなくても、「議長の陰謀を探ろうと、身を隠しながらあれこれ調べまわり、議長の刺客に対して防戦をする」「議長の陰謀を探ろうとしていて、議長の謀略で汚名を着せられる」というようにしていれば、何の問題も無かったのに。
 どうして、あんな事をさせたのかというと、41話『リフレイン』のキラのトンデモモノローグ(カガリラクスを邪魔する者は許さないとか、自分たちが攻撃される理由がまるでわからないとか)でほぼ確信できましたが、種デスのメイン製作者、「キラたちは正しくて可哀想なのだから、実力行使でそれを訴えるのは当然」という、あきれ返るような非常識な考え方でストーリーを作っているようです。
 どうしてこんな、頓珍漢な代物になっているかについての推測。
 学校や家庭内での平凡な少年少女の主張といったスケールの話なら、カガリの優柔不断や、アークエンジェル隊のような狼藉もいいでしょう。しかし、種デスは、世界規模の戦争や政治の話で、キラ、ラクス、カガリは、世界情勢を左右するような英雄や政治家、カリスマ。なのに、種デスのメイン製作者、平凡な少年少女の青春の主張ぐらいでしか、考えられていない。ちなみに「富野作品の特にΖあたりなんて、こういう衝動的なキャラが多いじゃないか」とキラたちを擁護する意見を聞いたことがありますが、Ζなどで衝動的なカミーユなどはあくまで一兵卒レベルの歳若いキャラ。シャアやブレックス、ヘンケンなどの、責任の大きな立場の者は、そんなことはしていません。