名探偵ポワロとマープル

『エジプト墳墓の謎 後編』
 ああ、「ツタンカーメンの呪い」というデマ説が、作中で事実として言われちゃってるよ。元々は発掘隊と険悪だった当時のマスコミによるデマ。代表的な死人は実際にはごく妥当な死亡例だし、他の多くの死亡例は、直接の関係者でないうえに発掘から相当の年月がたってからなので、明らかにこじつけ。

 富豪の息子を自殺に追い込んだトリックは、やはり相当無理があります。あの程度の状態で信じ込ませるのは無理があるし、信じたとしても、帰国後にも藁にもすがるつもりで他の者にもあたるのが普通です。
 原作からしてそうですが、アニメ独自のポワロの台詞として「せっかくの完全犯罪」とありますが、犠牲者の遺言をしらべたら、容疑者はすぐ特定できるから、全然完全犯罪じゃないし。

 おまけに、原作では導入での重要な伏線だった、富豪の息子が「発掘現場に友人を訪ねに行く」と言っていて「どうして父親ではなく友人なのか」とポワロが疑問をもつという部分も、このアニメ版ではなぜか解決編になってから提示。しかも、ほんの一言「なぜ父でなく友人なのでしょうか」といわせればよかったのに、それも無し。
 どうせ、少しミステリーに慣れた視聴者には、犯人は前半の時点でバレバレなのに、これでは、いたずらに、ミステリーとしての伏線を台無しにしているだけ。ミステリーというのは、ただ単に謎を隠す事よりも、謎がとかれる時に納得のいく形で伏線が収束する方がずっと重要なのですから。

 あと、原作では、ポワロがやたら伝説を高く評価していた事について、最後で「迷信は人の心(特に犯人の殺意)に与える影響の方がずっと重大」という真意を話してくれるのですが、アニメ版では「迷信は真実を映し出す合わせ鏡」という上手い言い回しを途中で言っているのに、結局、犯行のカモフラージュに利用しただけという浅はかな扱い。

 原作もさほど良く出来ていたわけではなかっのですが、アニメ版ではさらに駄目にしています。
 やはりこのアニメ版製作者、ミステリーをやるセンスがないです。