ゼーガペイン 第8話「水の向こう側」

 主人公のキョウは、普通の人間ならこれぐらいネガティブになるだろうという部分と、物語の主人公として前向きである部分が上手くバランスが取れています。
 いわゆるエヴァ以降にありがちな主人公だとひたすら鬱屈していて物語の牽引自体の障害になっていたり、それに対するカウンター的な主人公だと逆にひたすら能天気、前向きすぎたりしましたから、キョウぐらいバランスが取れている主人公はなかなか居なかった。
 今回の話はよく考えてみると、主人公の鬱屈と、それを振り払った直後の機転の効いた戦法を駆使した戦闘の爽快感という点では『飛べ!ガンダム*1。しかも台詞回しも配慮が行き届いていますし、今まで描かれていた、例えコンピュータ内の物でも日常生活の価値は何物にも代えがたい事という仮想世界内視点と、コンピュータ内にかろうじて保存された儚い物であればこそ守らなければならない物という仮想世界外視点とがうまくかみ合って、キョウのモチベーションになっている。
 ただキョウのモチベーションなどは現段階での物。上官たちの会話や今後の話数を考えると、まだ二転、三転はあるでしょう。
 ところで以前の感想で書いた「元データがあれば、実際に動作しているデータ体/幻体が破壊されても問題無いのでは」という疑問。どうやら「実動体が破壊されれば固体単位の”死”。実動体Aが破壊された後、同じ元データを使って実動体Bを生み出しても、あくまでもクローン別固体のようなもので、Aが死んだという事には変わりは無い」という扱いの模様。これなら”死”のリスクはちゃんとある。後、今回の話でも元データが同じ以前のキョウと、今のキョウとでは体験によって差が出ていることがほのめかされていたので、これなら今後、経験の違いやデータ改変などによって大きく性格が変わった別のキョウが敵として出てくるなんて事もあるかも。

*1:まあ世界認識が崩壊するほどの鬱屈からポジティブに吹っ切れたキョウと、男のプライドでその場は奮起したものの慢性的に鬱屈を抱え続けているアムロとではまた違うのですが