ゼーガペイン 第6話「幻体」

 世界の真相が明かされた回。
 しかも「霊界」「脳に直接見せられている仮想世界」よりさらにシビアな、人間自身もコンピュータ内に保存された生前のデータを動かしているにすぎないという代物。霊魂や脳なら自分自身を定義する個としての実体はあるわけですが、この世界の人間はコピーデータにすぎない。
 とはいえ大方予想はしていた(というか、予想させるように伏線をはってきた)事ですし、こういうアイデアも初めてというわけではないです。しかし「ゼーガペイン」独自といっていいのは、こういう真相を、主人公自身もそうした存在という話では珍しく、オチではなく、話を展開するための認識として前半の内から作中人物と視聴者の双方に提示してきた事。ここからどう、こういう絶望的な状況から、主人公がどのような認識や目的意識を持っていき、話が展開していくのやら。

 なお、主人公は外部の存在で、内部の住人には自覚できない仮想世界にアプローチするという話なら割とよくあると思います。代表例は『スタートレック』シリーズにしばしばある、自分たちがデータ上の存在であることを自覚できないホログラム世界の住人に、主人公たちが苦労させられるというタイプの話。
 ......と、よくよく考えてみたらゼーガペイン世界の人間は、『スタートレック ヴォイジャー』のドクターと同じ存在なのでは。なんだかこう考えると、途端に深刻さがなくなってきたような。まあドクターは、あくまで確固とした現実世界が存在する上でのホログラム人格ですが、『ゼーガペイン』の場合は世界自体が曖昧な代物ですから。

 今回の話自体は、世界の真相と折り合いをつけられない主人公の焦燥ぶりがよかったです。
 あと、雰囲気は出るがこの手の話ではありがちともとられる哲学的なタームを出すのに、会話に今一融通の利かないAIの発言という形にしたり、主人公にそんな事はわかっているという態度(思い出す、認めたくない、焦燥というニュアンスも持たせる)をとらせたりして、小賢しくなりすぎないようバランスをとっていました。