総評まとめ
メインサイトの方の更新のために、感想を書いてきた物のまとめ部分を整理。
主に「光希桃AnimeStation」さんところの催しに送った物を転用。
文章などはまだ加筆修正するつもり。
機動戦士Vガンダム
75点
富野監督への好意的な評価を一気に盛り返したのはバランスが良いし安心して見れるターンエーでしたが、問題は少なからずあっても(いささか死人を量産しすぎなシェラク隊とか、特攻がバーゲン状態とか、エセ侍みたいな怪しげなバイク乗り魂とか......)黒富野全開でギラギラしているこちらも見返すと魅力があります。
富野作品といえばエキセントリックな台詞が多く、ターンエー以降の白富野ではそれが緩和されているのですが、『Vガンダム』はそれ以前なのでそういう台詞が多い。しかし、真骨頂はそちらでは無く、登場人物たち相互の多彩な会話や言動にこそあります。
これは程度の大小はあれ富野作品に共通しているドラマ的密度と多彩さなのですが、Vガンダムの場合、社会的軋轢ならず、友情や愛情という方面でも多々描かれていて、それがやはり大量に描かれている死とコントラストを成しています。
また活劇的な部分も、当時なら『0083』に代表されるようないかにもガンダム的なメカ描写は外しつつ、Vガンダムの構造をフルに生かした戦闘など、それぞれのメカの特性を生かした充実したものになっています。
『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』
80点
ほぼ等しく扱われている異なる立場の三人の主人公格の内、クリス(連邦)はまだNT1のテストパイロットとやや突出していますが、バーニィ(ジオン)は普通の未熟な新兵、アル(サイド6)にいたっては少々口が上手いだけの普通の子供。そんな普通の人たちが、それぞれの立場で最善の事をして、それでも悲劇的結末に至る巧みなストーリー展開。
バーニィは、部隊内で未熟者扱いされたり、アルにいいところを見せたくてエースだと嘘をついたりしますし、アルは戦争に無知なまま憧れのジオン兵の友達になろうとする子供ですが、それが感情移入や同情をできたり微笑ましく見えたりするもので、馬鹿で嫌な人物ではないという人物描写がまた素晴らしい。
そして終盤の展開。一度は逃げ出すものの、アルたちのコロニーを見捨てられずに戻ってきて戦おうとし、火事場のクソ力的な知恵と勇気で奮戦する。
しかしそんなバーニィの個人的な知恵と勇気とは全く関係ないところで、戦争という全体の状況の中で棚ボタ的にコロニーの危機はすくわれてしまい、事実だけを冷静に見るとバーニィは全くの無駄死にという残酷な結末。
しかも、仲のいい二人がお互いの正体を知らないまま殺しあってしまった事を、視聴者とアルだけが知っているというのが悲劇性をさらに強めている。
しかしそれを「無駄」と思わせない結末。
SDガンダムフォース
80点
まず、勇者シリーズ的な少年とロボットの友情物語として良く出来ています。
映像的にも、ネオトピア系キャラのメカニック性の演出は本家顔負け。特にキャプテンのオプションパーツの使い方なんて、むしろボトムズ的ですらあります。
アクションはフルCGという利点をフルに生かし、空間的広がりや三次元的視点を表現している。特にキャプテン等の機械的装置で飛んでいるキャラの飛行シーンは、ほとんどのアニメであまり表現されていない、大きな馬力のエンジンで広大な空間を飛び回るというのが表現されている。
特に天宮編終盤と最終決戦編の完成度は神ががり級。天地城や大神将を大道具に据えた合戦シーンも完成度が高いですし、騎馬王丸の覇王としての道を貫く姿勢と大人物ぶりや、未来の王者である元気丸の資質、ジェネラルとの最後の戦いでの劇中で主題歌が流れてからの神がかり級の演出など。
Rozen Maiden
60点
トランスフォーマースーパーリンク
65点
巌窟王
75点
独特の美術センスとモンテ・クリスト伯爵の魅力。
アルベールとの、いささか同性愛臭くもあるが、絶妙な、擬似親子関係。DVDで初期話を見て、大変面白く、その勢いでオンライン配信で全話を一気に見ました。
スクールランブル
70点
原作を上手く生かしている上に、演出なども、通常シーン、奇天烈シーンともに、面白い。最終回も「青春とは夢のような物だ」という表現で上手くまとめていました。
月詠―MOON PHASE―
60点
オープニングと変わった演出が第一に良かったです。ただ、他の部分でも、大きな問題はないものの、それ以上一押しできる要素も弱い。
アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル
35点
後半にはマシになりはしたが、ミステリーの読み方や、映像作品化のノウハウがまるでわかっていない脚本や演出。先行してたくさんある実写作品に何のアドバンテージもない凡庸な画面作り。放送局側の勘違いによる明らかにアフレコが下手なレベルの俳優の起用(主役の二人はさほど問題はなかったですが)。
脚本演出で最悪だったのが『ABC殺人事件』、アフレコで最悪だったのが『エンドハウス怪事件』。
スターシップオペレーターズ
25点
原作の内容を完全に勘違いしている上に、脚本の出来や、アニメ版スタッフのSFをこなす能力も大変低かった、愚作。
原作のわざと軽くしてある部分を考えなしにカットして、チグハグになった人物描写やストーリー。原作小説の地の文を考えず、台詞だけ抜き出したような、下手糞な脚本。毎回、戦場の厳しさというより、わざわざ自殺行為をして死んだようにしか見えない、主人公の仲間たちの死。原作のSF設定を上手く消化できていない。それどころか、アニメ版独自のエピソードになると、露骨にSF考証や描写のレベルが下がる始末。
まほらば〜Heatful days〜
60点
ほのぼのしながら見ていました
これが私の御主人様
60点
ひたすら、好きな娘ほど意地悪をしたくなるというので、笑いとスケベを描いた話。
本筋に関係無いところでは、御曹司の父親がもろに変態おさげ爺モードの東方不敗先生だったり、御曹司の親戚が声つながりでローラ・ローラの扮装をしていたりと、悪くない気にさせてもらいました。
フタコイ オルタナティブ
65点
こういうのは嫌いではない。しかし、終盤、大きくて得体の知れない不安や社会的障害のメタファーであったはずのイカ男などが、悪の秘密結社の陰謀という、打倒しやすい形にすりかえられたことに、失望。
魔法先生ネギま!
30点
必須のはずの可愛い女の子とアクションを作画できる体制が出来ていなかったであろう点が最もまずい。他にも、各キャラの言動等の妙に野暮ったい感じ、ずいぶんいいかげんに短くまとめた修学旅行編、終盤の殺せば話が重くなる&安易な展開と解決という駄目パターンの典型など、問題点は多数。
かみちゅ!
75点
幾分非日常の入った、日常を表現する、作画と演出の細やかさを楽しむ作品
攻殻機動隊S.A.C. 2nd GIG
70点
創聖のアクエリオン
70点
テーマを表現する映像のパワーというのを思い知らされた作品。
最初は、同じ監督の「アルジュナ」のようなオカルト自然信仰の垂れ流しがまた繰り返されるかと思って忌避していましたし、三段合体変形も「思い込みで何でも実現」するため各形態の違いを感じられず、厳しくみていました。
しかし、理念的な部分は、奇抜ながらも、本質的には地に足の付いた人生訓で、映像でも上手く表現している。
合体変形も、後半、色々と工夫して見せていたし、最後まで「合体=人間関係」というのを象徴して描いていた。
機動戦士ガンダムSEED DESTINY
25点
前作SEEDが、控えめに言って凡作、率直に言って駄作だったのを、さらに下回った、愚作。
こんなものが看板作品クラスとして一年間放送されたとは、あまりにも救いがたい事実。
問題1:制作進行上の問題
予算、人員的問題などは、明らかに問題なさそうなのに、バンクによる大幅水増しと、総集編の連発。脚本や演出がどうこういう、はるか以前の問題。
噂レベルでは前作から「メイン脚本家が脚を引っ張っている」と言われていましたが、今回はついに、放送終わり近くになって、公式サイトのサブ脚本家のコラムでその事がほのめかされたり、最終回直前に作画担当の個人サイトでその事情が直接書かれるにまでいたる。
監督、プロデューサー等は、どうしてこんな状態を放置してきたのです?
問題2:作劇能力の問題
前作以来、「有能さ」を描くための、具体的な理念、戦略戦術、政略、人心掌握などが全く描けず、その時点で負ける事になっている相手を無能に貶める事でしか表現できない、貧弱な作劇能力。
政治、軍事、経済、科学などについても、基礎レベル程度の事すら、三流漫画や小説の内容を真に受けたような、稚拙な代物。
こんな貧弱な作劇能力でも、前作SEEDは、過去のガンダムとその派生作品のストーリーラインをコピーし、正義の主人公 対 虐殺狂の悪という単純な対立図式にする事で、何とかまとめていました。しかし、今回は、直接的な模範例のないストーリー展開や、単純な悪ではない敵など、わざわざ明らかに手におえない事をして、自爆している。
問題3:物語を構築している社会・倫理モラルの問題
物語上、正論に近いとされている、キラ・ラクスグループの一連の言動や扱い、ハイネの仲間論、アスラン脱走時の議長糾弾等を見ていると、物語を構築している社会・倫理モラルそのものが、酷く幼稚な代物と判断せざるを得ない。
まともなモラルで考えるなら、キラ・ラクスたちの行動は彼らたちなりに平和のためにやっていたとしても、厳しく糾弾され報復を受けるのはやもえない事であるし、なによりも、度重なる武力行使以前にやるべき多くの努力を全く怠っている。ハイネの仲間論でなら、MS戦闘はおろか、野球やサッカーすらまともに出来ない。アスランの粛清は、アスランの方に問題行動が多くて、議長が悪人でなくても、当然の行為。
しかし、この物語では、キラ・ラクスグループ等の独善と被害者意識や、ハイネの社会性ゼロな仲間論などが、正論として据えられている。
実はこの問題、前作からでしたが、前作は単純な悪を敵に据える事で何とか取り繕っていました。しかし今回、無謀にも、理念や立場の相対化という試みをして、製作者的には「キラたちの主張も完全に正しいわけではない」としている部分は、「キラたちは100%近く間違っている」と見えてしまうという、珍妙な代物になっている。