ウルトラマンマックス 狙われない街

 あの当時のメトロン星人本人が「昔はよかった」「最近の若い者は」と愚痴る話。
 凄い。徹底して『狙われた街』のセルフパロディだ。
 でもってあの当時、徹底的にやられたはずのメトロン星人がどうやって生き延びていたのかと思ったら......あんないいかげんな方法で生き延びていたのかい。

追加

 今回の脚本。いつものマックスのレベルの演出や俳優でやっていたら、いつものように安直な「人間駄目だ」話にしかならないでしょう。
 冷静に考えれば、「昔だって携帯マナーならぬ喫煙マナーの悪い人はいくらでもいたのでは」「馬鹿な若者はいつの時代もいるでしょう」など、昔を美化していると考えられる*1 *2
 しかし俳優や演出、なによりメトロン星人という歴史のあるキャラクターが、年月の重みを感じさせて「最近の若い者は」というのに、重み、味、あるいは老いの実感というのを感じさせる。
 それに、メトロン星人の言動を見ていると、言葉の表では「帰る」「見捨てた」と言いつつ、昔の夢よもう一度的な陰謀を中途半端に行ったり、帰る帰ると言いながらジャンケンなど口実をもうけて中々帰らないなど、実にアンビバレンツな感情を見せている。
 夕焼けを美しいというメトロン星人。これは、単純に40年間すごししてた地球の美しさへの感慨を述べているだけにも聞こえますし、あるいは、自分が一番輝いていたセブンとの名勝負を回想しているともとれますし、あるいは監督本人の旧作懐古ともとれる。
 実に面白い。

 ただ唯一気になる事。監督か脚本家かは知りませんが「携帯電話で人間の脳が萎縮」って、まさか、ゲーム脳とかのトンデモ説を真に受けているなんて事はないでしょうね?

*1:「最近の少年犯罪は件数も巨悪性も増した」と言っている人たちの少年時代こそ、統計データを冷静に見ると、今よりずっとそうした事件が多かったというのとか

*2:そういう昔への懐古の強い感情とともに、それはただの美化による妄執ではないのかという、冷徹な視点も同時に見せたのが、傑作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶオトナ帝国の逆襲』