ガンダムしかしら知らない世代

 『かみちゅ!』を見ていたり、DVDの音声コメントでの若い声優さんの話を聞いていたりすると、「80年代も昔になってしまった」と痛感させられます。

 本題。

 ガンダムSEEDシリーズが物議をかもして以来、肯定否定共に、各所でいろいろと言われています。
 でもって、私もなじみの相手などといろいろ話してきたのですが、そこから離れると、予想外だった事態に直面した。

 Amazonを利用しだして、このレビューも見る。
 まあ、あそこのレビューは、数が多くても、あまり質がいいとは言えないのですが、SEED関連のレビューを見ると、ある事に気付いた。
 「この人たちは、ガンダムしか見ていない」
 ガンダムシリーズ全般を引き合いに出していればいい方。多くの場合初代ガンダムしか引き合いに出さず、また、問題点も多いはずのΖをやたら高みに置いている事も多い。

 別の件で、ある方と話したとき。
 私は「ところで、私は高橋作品のダグラムボトムズガサラキなどと比べると、こう思うのだけど」と話をはじめたら......相手「なんですかそれ?」。
 愕然としました。ダグラムはまだ仕方が無いにしても*1、ロボット戦争物の素人批評をするのに、ボトムズなんて著名な名作を、存在すら知らないとは。相手の年齢はは20台強らしい。

 考えてみれば仕方がない。
 私や、私に近い年代など、80年代前半の第一次ガンダムブーム(リアルロボット物ブーム/ガンプラブーム)を過ごしてきた身としては、ガンダム以外のロボット戦争物や、ロボットアニメがたくさんあって、ガンダムと同じぐらいの注目度で放送や紹介、関連商品のリリースがされているのは当たり前の事で、それを体験として身につけていた。
 あの当時の、ガンダムの派生発展的な作品*2を挙げるだけでも、あの時期は、これだけ。あと、さらに数年遅れて『パトレイバー』が出てくる。
 さらに、それ以外のロボットアニメも多数ありました。あの時代は、リアルロボット物ブームであると同時に、ロボットアニメ全般のブームでもあった。
参考
http://www2.plala.or.jp/shivayan/shivayan/page8/robo.htm

伝説巨神イデオン 1980/05/08 〜 1981/01/30
太陽の牙ダグラム 1981/10/23 〜 1983/03/25
戦闘メカ ザブングル 1982/02/06 〜 1983/01/29
超時空要塞マクロス 1982/10/03 〜 1983/06/26
聖戦士ダンバイン 1983/02/05 〜 1984/01/21
装甲騎兵ボトムズ 1983/04/01 〜 1984/03/23
特捜騎兵ドルバック 1983/10/07 〜 1984/06/22
機甲創世記モスピーダ 1983/10/02 〜 1984/03/25
銀河漂流バイファム 1983/10/21 〜 1984/09/21
重戦機エルガイム 1984/02/04 〜 1985/02/23
巨神ゴーグ 1984/04/05 〜 1984/09/27
機甲界ガリアン 1984/10/05 〜 1985/03/29
超獣機神ダンクーガ 1985/04/05 〜 1985/12/27
蒼き流星SPTレイズナー 1985/10/03 〜 1986/06/26
機甲戦記ドラグナー 1987/02/07 〜 1988/01/30

 しかし、今の20歳前後の方は、「身の回りにあるロボット戦争物は、ガンダムがほとんど唯一」という状態。

 でもって、体験を共有していた近い年代の方となら「SEEDはああしているけど、ボトムズではああだったね」と話と普通に通じるのに、20歳前後ぐらいの方と話すと「ボトムズってよく知らないんですが。それに、どうしてガンダムシリーズを、例に持ち出さないのですか?」となってしまう。実体験として。
 また、『SEED』で使われた情況設定やストーリー展開など、率直に言えば、リアルロボット物ブームの頃に作られた諸作品でも、既に色々とされていて、しかも、脚本などはむしろ退行さえしている(基本的なシリーズ構成、人物描写、ドラマの構築と展開などがまるでなっていない)のに、「独創的だ」という勘違いをしてしまう。
 さらに酷い例だと、80年代前半あたりの諸作品を念頭において、「今のSEEDは昔のと比べて問題だ」と言っても、理解されずに、「ファーストガンダム崇拝しているのだな」と自分の教養だけで早合点してしまう。

 もろん、現在でも、ガンダムシリーズ以外にも、ロボットアニメや、戦争物は作られていますし、昔のものも映像ソフトで見返すことができる。しかし、昔と違って、ガンダムだけがやたらとクローズアップされているので、自然と、ガンダムばかりを「体験」してしまうことになる。
 こればかりは、ある程度は仕方がない。
 人間、身についていない事は、どうしても、うまく理解できない。
 とはいえ、それなり以上に何か言うなら、やはりガンダム以外の教養も必須。もちろん、ロボットもの以外、アニメ以外のも。

 アメリカでは、スタートレックしかしらない「SFファン」は笑われるそうですが、日本では「ガンダム」がそういうポジションに来てしまったのかなあ......

*1:当時は、プラモなどが、ガンダムに追いつき追い越せとばかりたくさんでて、しかも売れていて、当時は充分メジャーだったんですが

*2:曖昧な定義ではありますが、いわゆるリアルロボット系や、スーパー系との折衷作を基準にしておきます